勉強会『医療的ケア児支援法案を学んでみよう!』参加レポート

2020年12月、『医療的ケア児支援法案を学んでみよう!』という勉強会が、オンライン会議システム「Zoom」で開催されました。超党派の議員連盟によりまとめられることになった、医療的ケア児を支援するための新たな法案。それに関わったメンバーから、法案の背景やポイントの説明があったほか、参加者との質疑応答が行われました。約90分に及んだ、こちらの勉強会の模様を報告します。

CHARGEっ子の中には日常生活において医療的ケアを必要とする、いわゆる“医療的ケア児”が数多くいます。しかし医療的ケア児は、かつていないものとして見なされていました。それが2016年の『障害者総合支援法』と『児童福祉法』の改正により、初めて医療的ケア児が法律に明記され、社会的に認知されるようになりました。それに伴い、2018年には障害福祉報酬改定が行われましたが、その結果は残念ながら不十分なものでした。そこで超党派議員立法として起草されることになったのが、この『医療的ケア児支援法案(仮)』です。

その大きな目的は、医療的ケア児とその家族に対する支援の、国及び地方公共団体の責務を明らかにすることです。さらには「医療的ケア児支援センター(仮)」を、各都道府県に配置すること。医療的ケア児が心身ともに健やかに成長でき、さらにその家族の離職を防止し、安心して出産・育児ができる社会を実現することが挙げられています。なおこの法案における“医療的ケア児”とは、18歳未満の者、及び高等学校を卒業するまでの者を指し、現状“医療的ケア者”までを含めることは困難という判断がなされています。

基本理念として掲げられているのは、以下の5つの柱です。

①日常生活及び社会生活における切れ目のない支援

②居住地域に関わらない、等しく適切な支援

③個々の医療的ケア児の状況に応じた、医療、保健、福祉、教育、労働等関係機関の連携の下の支援

④児童等でなくなったあとにも接続される切れ目ない支援

⑤それらの支援は、医療的ケア児及びその保護者の意思が最大限に尊重されること

国はそれらの支援を実施するための財政措置を講ずる責務を、地方公共団体はそれらの支援を実施する責務を有することになります。なお“医療的ケア者”は本法案の対象ではないと前出しましたが、④を加えることで者となった医療的ケア者についても、必要な支援措置を検討していく企図が込められています。

本法案では、親の付き添い問題、学校看護師不足への対処などについても触れられています。学校の設置者には、保護者の付き添いがなくても学校で適切な医療的ケアが受けられるよう看護師等を配置すること。国及び地方公共団体には、その学校に対する支援並びに、人材確保のために喀痰の吸引等が可能な介護福祉士・ヘルパー等を配置すること。放課後等デイサービス事業者等には、同じく医療的ケアを行う看護師等を配置すること、などが明記されています。

目的に挙げた医療的ケア児支援センター(仮)とは、以下のような働きを持った施設になります。医療的ケア児及びその家族に対し、情報の提供、助言等を行うことに加え、関係機関との連絡調整を行うこと。医療や福祉の関係者には、医療的ケアの情報提供、研修を行うこと、などです。今後、全国の都道府県に最低ひとつずつ、行ける範囲のところに設置されることが義務付けられていきます。

さらに目玉施策に挙げられているのが、大島分類以来、約50年ぶりとなる医療的ケア児新判定基準「前田スコア」の設定です。これにより新基準による医療的ケア児の基本報酬区分が設定され、これまで非常に使い勝手の悪かった看護師加配加算の要件が緩和されることになります。また残された課題や新たに生じる問題は、障害者総合支援法改正や、本法案成立(2021年目標)後、3年ごとの見直しで議論、措置されていくことになります。

その後に行われた質疑応答では、予定時間をオーバーするほど多くの質問が寄せられ、特に当事者の関心の高さが伺われました。やはり多かったのは、福祉報酬の改定について。「近年は動ける医療的ケア児もおり、重心児向け以外の放課後等デイサービスにも加算や報酬がつくようになるのか?」という質問には、新たな判定基準や看護師加配加算が大きく後押しになるだろうとのこと。さらに当事者からもこの法案を応援したいという声には、SNS等で見える化することが大事との返答でした。 5年に及ぶ議論の結果、ついに成立に向かっている『医療的ケア児支援法案(仮)』。CHARGEっ子の今後にも大きく関わる法案だけに、これからもその動向に注目していきたいと思います。